4年に一度のオリンピックが始まりますね。
日本人に頑張ってほしいですが、やり過ぎは禁物です。
金メダルを齧るブオトコや、
金メダルにキスするブサイクは見たくありませんから。
6月に読んだ本を書き留めます。
もちろん、当サイトはネタバレ必須ですので。

【国境の南、太陽の西@村上春樹】
噂の村上春樹の世界を初体験しました。
彼曰く「個人的な感覚や生理的バイブレーションをなるべく正確に分かりやすく言語化する」ことに拘りがあるとか。
だから内容は分からずとも文章が好き、という声を聞くし、
主題をずばり書かないので、読み手によって感想が変わる作家でもあるのだそうだ。
で、この作品。
読み終えてタイトルの意味を考える。
「国境の南、太陽の西」どちらも日常から離れた理想郷、あるいは幻想・・・。
愛する妻とふたりの娘がいて、仕事も順調な30代の主人公・ハジメ。
ある日小学校時代の忘れられない女性・島本さんに出会ったことから、
自分の中の欠落したものに気づき、彼女こそがそれを埋めてくれると考えた。
しかしそれは結局のところ幻想にすぎなかった・・・ってそういうことかな?
国境の南への憧れ、しかし我々は太陽の西へと向かう。
僕らに残るものは砂漠のようなものだけだ。
うーん、やっぱり村上春樹はむずかしい。
最後に何かサプライズがありそうな気がして、結構引き込まれて読み進んだのだが、
結局何が言いたいのかわからなかった。
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【窓の魚@西加奈子】
温泉旅行に来た2組のカップル。
当然のことながら同じ場所で同じ時間を過ごしても、感じることは四者四様。
腹の底では何を考えてるかわからない。
最初に登場する「ナツ」が一番おかしな女かと思いきや、他の3人の方かずっとイカれてる。
皆、闇を抱えていて歪んだ愛情でそばにいる。
陰鬱な雰囲気が漂うのだけれど決して嫌な気分にはならない。
結局、死者が誰であったのかは明かされないし、読み終わった時「え、終わり?」と思うのだが、
この突き放した感じがいい。
西加奈子らしいハジケた文体・表現は無いが、「普通の」文学作品として、「普通に」よく出来ている。
が、「西加奈子」を期待すると拍子抜けすると思う。
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【月魚@三浦しをん】
古本屋「無窮堂」の主・真志喜と卸しを生業とする瀬名垣の古書に関わる話。
古書の才能を開花させたがために親友の家族関係を壊してしまうきっかけを作った瀬名垣と、
あの日を境に自分と祖父の元を去った父との、遠い日の菜園の記憶をたぐる真志喜。
そんな二人の耽美的BLの空気を含ませた、また匂わせる表現にしをん嬢らしさを感じます。
水底の魚が月をめがけて跳躍し、自分の世界に帰還していくというところの描写が秀逸。
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【袋小路の男@絲山秋子】
3編収録の短編集だが、表題作「袋小路の男」と「小田切孝の言い分」はワンセット扱い。
袋小路に佇む野良猫のように一定の距離を保っていれば逃げることはしないが、
手にいれようとすると永遠に離れてしまうような微妙な距離感の関係を12年。
日向子はいつかはきっと振向いてくれるという希望が成就すると思ってるふうではないが、
抱いてくれとはストレートに表現する。
小田切は他の女性とは関係を持つがすぐ別れるような男。
なぜ、日向子に手を出さないのかは「小田切孝の言い分」をみてもわからないが、
指も触れ合わない徹底ぶりは「友達として大事だから」といった安っぽい感じとも違う。
「ばかげた話」と思わせない「何か」がすごい。
ただ、3編目の「アーリオオーリオ」のほうが好きな作品だ。
人付き合いを敬遠する主人公の男と、思春期に悩む14歳の姪が、
手紙を通して交流して共感していく様子は、ユーモラスであたたかく沁みてくる。
宇宙とパスタのモチーフ、それを包む空気感が素晴らしい。
「こんばんは。
今日、私は新しい星を作りました。私だけにしか見えない星です。たったの3光日の距離にあります。
名前はアーリオオーリオ。
私は、哲おじさんに手紙を書く時カーテンをそっと開けて、星を見ます。
手紙を書いて、ポストに出して、おじさんに届いて、おじさんが読むまで3日かかります。
そのとき、アーリオ・オーリオの光が届くのです。
なんと!私の手紙は光の速さと競争しているのだ!
おじさんが今、何をしているのか私は知らないし、おじさんがこの手紙を読んでいるとき、
私が何をしているかもわかりません。
でのもアーリオ・オーリオがあるから大丈夫なのです。」
中学3年生の女子からこんな手紙をもらったら、もうすぐ40歳のメガネさんは感動で号泣すること間違いなしです。
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【沼地のある森を抜けて@梨木香歩】
「ぬか床」から始まる壮大な物語。
死んだ叔母から引き継いだ、家宝の「ぬか床」。
両親も事故で亡くし、残る身内の叔母が言うには、ぬか床は持ち主を選ぶらしい。
毎日朝晩まぜていると、床の中に卵のようなものを見つけ・・・と、ファンタジー的な要素を感じてたのだが、
終盤は種の繁栄・存続・性のあり方・・・等、生命の神秘に触れるまでに大きなスケールの話になって、とても難しかった。
自分とは何か、生命の根源とは何か、生きるとは何か、そんなテーマだったのか。
途中、話の流れをぶった切ってまで現れた「かつて風に靡く白銀の草原があったシマの話」がいま一つ理解できなかった。
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【風の谷のあの人と結婚する方法@須藤元気】
元格闘家・須藤元気の本。
タイトルに「結婚」とあるが、恋愛本ではなく自己啓発本。
ただ、彼らしいユーモアあふれる語り口なので、読みやすく一気に読めた。
学びの基本は、守破離。 守って、破って、離れる。
最初は先生の教えを忠実に守る。
基礎を破りつつ、自分の色を着ける。
アレンジができたら、先生から離れて完全にオリジナル化する。
論語とかのパクリだと思うが、これは使えると思った。
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6月は以上、6冊です。
毎日バタバタと慌ただしい中、酒だけは時間をかけて呑んでます。
睡眠時間を削ってまで。。。

出張で大阪に行きました。
大阪では「エスカレーターは右」がマナーらしいです。
もし左に乗ったら
「どかんかい、ボケェ~!!」
と恫喝されるのでしょうね。
オオサカ コワイ。
▲ by wakachannel471225 | 2012-07-22 16:17 | BOOK